釣り開始。しかし…
母島に着いた翌日、概ね天気は良いのだが、遠くから大きな雲が接近している。 やがてどしゃぶりのスコールとなった。餌やその他の食糧を購入していると、 どこからかお婆さんがやって来て話し掛けられる。なんでも、今年は全然釣れない というショッキングな話しを聞かされてしまった。 釣り場は、鮫ヶ崎の防波堤である。 この防波堤は、外側に大型のテトラポットが入っていて、大型のイスズミが よく釣れる場所である。だが、現地に行ってみると、高波が防波堤に打ちつけ、 しぶきが乗り越えてくるような状況である。とても外海に向かって竿を出せるような 状態ではない。仕方なく、先端付近の比較的しぶきのかからない内湾に向かって 釣りをすることになった。海の中を見ると、各種ハギの類や、スズメダイなどが 群れていて、嫌な予感がする。案の定、仕掛けを投入すると、一斉に餌に群がり、 あっという間に食い尽くされてしまう。この日の釣果、30cmサイズのメジナ一匹、 その他、ロクセンスズメダイ、オヤビッチャ、ヤマブキベラ…

ちょっと一服
あくる日になっても、高いウネリはおさまらず、場所を変えてみることにする。 しかし、母島は島の殆どが断崖絶壁で、適当な釣り場がなかなか無い。 唯一釣りが出来そうなのは、東港の防波堤と、北港の突堤だけであった。 しかし、どちらもあまり釣れそうには見えなかったので、この日は釣りをやめて シュノーケリングをする。島の西側は、どこも高い波が打ち寄せて、 白い濁りが入ってしまっているが、東港までは影響が来ていないと見えて、 抜群の透明度であった。おそらく20m〜25mはあったであろう。防波堤の回りには、 各種のスズメダイ、チョウチョウウオの群れ、ブダイ、イスズミ、ツノダシなどが 泳いでいる。しばらくすると、何処からともなくツムブリの群が現れ、手の届き そうな位近くで、私の回りをぐるぐる回り始めた。水中カメラを持ってきていれば、 結構いい写真が撮れたと思うのだが、残念ながら宿に置いてきてしまっていた。 ツムブリは、しばらく私の回りを回った後、何処へともなく去っていった。

最後のチャンス
最後のチャンス 1日島内観光を挟んで、母島滞在最終日前日。高かったうねりもようやく おさまり、鮫ヶ崎の防波堤で釣りが出来るようになった。(実際はうねりが 収まった訳ではなく、やって来る向きが変わって、影になっただけだった) 仕掛けを投入するとすぐにアタリがある。最初の魚を釣り上げるまで、そう時間は かからなかった。最初に釣れたのは、25cm位のイスズミであった。 小笠原に多くいるイスズミは、ミナミイスズミという種類で、普通のイスズミ と比べて、口の辺りが尖っているのが特徴である。イスズミの引きはクロダイ 以上と言われるだけあって、大きさの割に強い引きだ。しかも、足元はテトラで あるため、一気に引き上げないと、もぐり込まれてライン切れという事になる。 母島の魚はスレていないので、多少ハリスが太くても食ってくれるため、少々 強引に扱っても大丈夫だ。しかし、やはりここでも餌取りは多く、投入して 3〜4分で餌が無くなってしまう。餌はムロアジの切り身を使用しているのだが、 この餌を付け替える時間が非常にうっとうしい。昼近くになると、いよいよ 日差しが強烈になって来るため、一時釣りを中断する。島のお婆さんが言うように 全く釣れないと言うことは無いのだが、どうも全体的にサイズが 小さいようだ。結局当初目的の40cmクラスのイスズミは釣ることが出来なかった。 午前5匹、午後3匹(最大30cm,平均20cm強)のイスズミがこの日の釣果であった。

この日、台風13号が小笠原の南東海上で915hPaにまで発達し、接近しつつあった。

星空と音楽の夕べ
この日(12日)の夜、ヘリポートにて「星空と音楽の夕べ」というイベントが 開催された。この日は、「ペルセウス流星群」の極大日に当たるそうで (時刻は真夜中だそうだが)、星座に詳しい人が星座の解説をしてくれて、 音楽の演奏を聞きながら星空を眺めましょう、という趣向であった。しかし、 この日は、台風の影響からか雲が多く、上空の気流に流され、次から次へと 雲がやってくる状況で、予定通り開始はされたのだが、途中雨が降って、 島の方が自作された竹笛が濡れて音が出なくなってしまったり、 星座の説明も、時々雲のすき間から星が覗く時にしか出来ないなど、苦しい展開に なった。更にこの時刻には月が明るく照らしていて、月のない夜に見た星の数に 比べて五分の一くらいの星しか見えなかった。それでも時には雲が無くなる時もあり、 たくさんの流星も見ることが出来た。

母島をあとに…
8月13日母島滞在最終日。ははじま丸の出航予定は14:00である。 「昼頃まで部屋でゴロゴロして、昼食の時間になったらチェックアウトして、 何処かに食事に行こう」などと算段していたら、10時になると「チェックアウト お願いします」と言われて宿を追い出されてしまった。確かに、普通の旅館や ホテルであれば、10時チェックアウトというのは当たり前のことなのだが、 定期船の運航サイクルで生活パターンが決まる離島では、もっと臨機応変の対応が 出来ないものかと思ってしまう。実際、良く行くケラマなどでは出来ているのだから…

ははじま丸は定刻通り出航した。母島の西岸を北上中はそれほど揺れなかったのだが、 母島を離れると猛烈に揺れ出した。いつ「引き返します」などとアナウンスが 入らないかと心配であった。揺れている中、何とかデッキに出て海面を見ると、 船の横揺れを防ぐため、海中に突き出している羽根(フィン・スタビライザー)が、 波のため、海面から出たり入ったりしている。それでもなんとか引き返すことなく 父島に入港することが出来た。なお、この翌日のははじま丸は欠航になってしまった。

小笠原旅行記後編へ続く